サルが書いた核融合



知りたい①:そもそも核融合(かくゆうごう)って何? サル:お答えしよう、“核融合(かくゆうごう)”ってのは水素(H)みたいな軽い原子核どうしがくっついて    ヘリウム(He)みたいな重い原子核になっちゃうような反応のことなんだよ。 気になったと思うけど、このときの軽い・重いってのは水素はヘリウムに比べたら軽いし、 ヘリウムは水素に比べたら重いってことなんだよ。まあ、使用前・使用後って感じかな? でもってこの核融合っていう反応で大きなエネルギーが取れるんだ。 このエネルギーを電気に変える方法を一昔前のえらい人が考えたんだよ。それ以来、人間は たくさんの電気を使うようになってきたんだ。また、それと同時にいろいろな変換方法を作ってきた。 火力・水力・原子力などだね。ここでいう原子力は核分裂(かくぶんれつ)のことなんだけど、核分裂と 核融合は相対するものなんだ。核融合は原子核をくっつけるんだけど、核分裂は原子核を分けるのさ。 一般的に核分裂の方が核融合よりもものすごく大きなエネルギーが取れるんだ。 ほかにもいろいろ研究が進められているんだけど、その中の1つに核融合があるんだよ。地球上じゃ ないけれど、太陽や夜空に輝く星などでは核融合と核分裂の両方が起こってるんだ。この太陽のエネ ルギー源は、主に水素をもとにした核融合反応なんだよ。これを地上で起こそうとしたときに最も近道 なのが重水素(D)と三重水素(T)を使うものなんだ。 サルの一言メモ:「エネルギー」 簡単にエネルギーって言ってもみんなはボンヤリとしかエネルギーってものを想像できないと思う。 サルもはっきりとはわかんないけどね。でもそこらへんにいっぱいエネルギーはあるんだ。ただ形を 変えてるだけなんだよ。僕らだって食べ物を食べて動いているだろう?それは食べ物を動くための エネルギーに変えているんだ。そして僕らは動くことによってエネルギーを使い、僕らが動くことに よってまた何かのエネルギーに変わってるんだ。つまりエネルギーは姿を変えて回り続けてる。 たとえそれが良い姿でも悪い姿であってもね。 たとえば・・・ この世界にたった1本のみかんの木があるとするよね。そのままではその木の下に全ての実が落ちて しまうよね。これはムズカシイ話になってしまうかもしれないけど、生物というのは第一の宿命みたいな ものに「種の存続」というのがあるとサルは思う。全ての実がその木の周りに落ちてしまうとその木が 立っているところが災害などを受けると全滅しかねないだろう?世界からみかんが消えてしまうかも。 だから植物は太陽や水などからエネルギーをもらって実を作り、それを食べるサルにエネルギーとして 実をあげる代わりに種を他の場所に運んでもらうんだ。そうすることによってみかんは生き残るんだ。 とまあ、こんな風にしてエネルギーは姿を変えて回ってる。
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知りたい②:なんで核融合でエネルギー? サル:なんでって言われても、エネルギーが足らないからでしょうが。必要だからでしょうが。高度経済成長と呼 ばれた発展の影で人間はエネルギーをものすごく使うようになったわけやね。この人口爆発が叫ばれて いるこの御時勢に、今後世界中の人達が私らと同じような暮らしをすると考えてみぃ。人類のエネルギ ー消費量は急激に増えていくこと間違いなしではございませんか。このエネルギー需要を満たすものの 1つが核融合エネルギーなんだってば。核融合を地上で実現できれば人類はなくなることのないエネル ギー資源を手に入れたも同然になるわけよ。DT反応だけみても誰だか知らんけど計算したら資源量は 1000万年以上もあるんやて。さらに、核融合に必要な燃料の資源は、豊富に存在する。さらにさらに 核融合反応は地球温暖化や酸性雨の原因となる二酸化炭素や窒素酸化物を放出しません。ちょっと ばっかし装置の一部が放射能を帯びるけど、100年ぐらいで100分の1ぐらいになるから環境にも安心 安心。 サルの一言メモ:「放射線と放射能」 違いがわかるかなー?放射線は確かに危ないよ、生物に影響あるし。でも影響があるのは量の問題で もある。だって自然界にももともと放射線は存在するんだから。うちらが生まれる前からある天然の放射 性物質からの放射線や、宇宙から飛んでくる放射線などよ。食物だって木々だってわずかに出している んだよ。それを踏まえた上でなんと!年間で核融合施設からの放射線は自然から受けるよりも少ないっ てよ。それだったら病院で受けるレントゲンの方がよっぽどやばいって。また、放射能てのは原子核が自 然崩壊して放射線をだす能力を言うんだな。その性質をもってると晴れて「放射性物質」となれるのだ。
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知りたい③:核融合反応の起こし方 サル:①でも話した通り、核融合反応というのは2つの原子核どうしを衝突させて融合するものなんだ。原子核 てのは正の電荷を持ってるから磁石のN極とN極、S極とS極のように反発しちまうんだ。だからものす ごい速さでぶつけないとならないんだ。速いと原子核どうしの反発力が強くても避けきれないんだね。 こ のすごい速さとは毎秒1000Km以上なんだよ。なんて言ったってこのスピードは重水素(D)と三重水 素(T)を1億度以上に加熱しないとできない。こんな想像もつかない温度のときにはプラズマという状態 になっているんだ。また、これと同時にプラズマ中の燃料である原子核の数を増やし、十分な時間を保 持しなければならない。これらの条件のうちどれが欠けても核融合反応は起こしたくても止まってしまう。 1回の核融合反応が起こっても、でてくるエネルギーが次の核融合反応のために使われなければ核融 合反応を連続して起こすことはできない。つまりエネルギー源としてなり得ないのだ。つまり、たくさんの 原子核を一定時間、一定の領域に閉じ込めなければ核融合反応は連続して起こせない。 サルの一言メモ:「プラズマ」 皆さん、プラズマって知ってますか?最近流行の核融合には欠かせないこのプラズマなんですが、実は 物質の状態を示すものなんですよ。高校などでは、物質の三体として液体・固体・気体というものを学ん だでしょう?じつはその上があって、物質の四体目としてこの“プラズマ”があるのです。どんな状態かと 言いますと、気体は分子が飛んでいるのに対してプラズマは原子や電子などがバラバラになって飛んで いる状態です。これは人にたとえると、固体のときは子供たちがキチンと整列してスクラムを組んでいる 状態で、液体のときはそれが少し緩和されて5人一組ぐらいで走り出した感じですな。気体になると一人 一人が自由になり晴れてどこへでも行けるようになり、バラバラにあちこちに走り回っている状態です。 そこでプラズマなんですが、これは大変ですよ何もかも脱ぎ捨てて(服やら靴やら下着やら…)真っ裸で そこらじゅうを駆けずり回っている状態なんですよ。もちろん、プラズマ状態では電子と陽子、中性子がす べてバラバラで飛んでいるので電気・磁気に影響を受けるんです。オーロラや雷、蛍光燈などが例にあ げられるでしょう。サルは以前に何かで読んだことがあるんだけど、一番身近なプラズマ状態は蛍光燈 が有名だけれども、マッチを擦って起こす炎もプラズマ状態らしい。ということはその方が身近じゃない? ちなみに核融合のプラズマは超高温プラズマと言うんだよ。
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知りたい④:なんでエネルギーが取れるのか サル:核融合反応が起きると大きなエネルギーが取れることは①でも話したんだけど、どうして取れるかという とだね、核融合反応を起こす前の重水素と三重水素を足した重さより、核融合反応後のヘリウムと中性子を 合わせた重さの方が少しだけど軽いんだよ。そこでなくなった質量の分だけエネルギーに変わるからな んだ。質量がエネルギーであるというのは、あのアインシュタインさんが証明したんだ。どれくらいかとい うとだね1gの重水素・三重水素燃料から約8トンの石油と同じくらいなんだよ。 サルの一言メモ: いままで何回も出てきたけど、重水素・三重水素ってあったよね、これは水素の仲間たちなんだよ。水素 ってのは1つの電子と1つの陽子でできているんだけど、重水素ってのはその原子核である陽子に電荷 を持たない中性子っていうのが1つくっついてるものなんだ。三重水素なら2つだな。陽子と中性子は姿 形も似ていれば、重さだって同じくらい、違う点といえば電気的性質があるかどうかってことだけだ。だか らこれらを同位体って呼んでいる。この中でも三重水素はトリチウムって言うんだよ。
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知りたい⑤:トリチウム? サル:水素の仲間でもトリチウムだけは放射能を持っているんだ。トリチウムはその能力を使って弱い放射線 を出して放射能を持たないヘリウムに変わる。このときに出される放射線はとても微々たるもので厚紙 でさえも遮れるほどなのだ。このように自分自身で勝手に別のものへと変わっていくのでだんだんとトリ チウム自身の数は減っていく。トリチウムは約12年ほどで元の数の半分になる。また、体内に取り込ま れても汗や尿と一緒にオサラバです。このトリチウムの取り扱いは、現在でも技術開発が続けられて おり、高い安全性が認められているんだす。 サルの一言メモ:半減期 放射能を持った物質が自分自身で他の物質に変わっていき、元の数から半分になるまでの期間を半減 期と言うんだよ。だからトリチウムの半減期は約12年ということになるね。原子力発電において出てくる 放射性廃棄物の半減期は確か100年ともそれ以上とも言われているよね、はっきりとは言えないけど。 核融合の場合も少ないけれども放射性廃棄物は出てくるんだ。けど、その半減期は核分裂から出てくるものよ りも短くて100年経つと10分の1ぐらいになるんじゃなかったっけ?とにかく、短いわけよ。場 所もとらずに半減期も短いんではそっちの方が断然、お得でしょ。
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知りたい⑥:核融合の安全性 サル:核融合炉で核融合反応を起こすためには、燃料であるトリチウムを外部から炉の中に入れなければ駄 目なんだ。だから燃料の供給を止めると反応が簡単に、そして確実に止まる。また、燃料を入れすぎた ときにも暴走することはないのさ。さらに、③などでも話したように核融合というのはいろいろと複雑な条件 を満たさないとできないわけで、条件が1つでも欠けると反応は起こらなくなるんだ。常に安全を心掛け ている上にそういったこともあるんだから安全性については問題ないと思うよ。でもトリチウムが放射性 物質であることに変わりはないよね。でも、それにもキチンと対応しているんだよ。核融合施設には トリチウムがあるから、外に洩れないように複数の壁によって閉じ込めたり、放出される量を減らす 設備(トリチウム除去系)を作って一般人や作業に従事している人たちの安全を守っている。また燃え 残ったトリチウムを捨てずに回収して燃料としてリサイクルしている。装置の部品なども放射線によって 放射能を持つようになるけど、使用後数年~数十年でまた使えるようになるんだよ。こんなこと原子力発 電所ではそうそうできないよ。さらに、それら、装置の部品をもリサイクルする技術開発が進められてい るちゅう話じゃ。
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