目次
(1)どこからエネルギーが生まれるか
(2)どうやってエネルギーを生み出すか
(3)プラズマの制御
(1)どこからエネルギーが生まれるか
私たちの身の周りの物質は原子(または分子)から構成されています。
私たちが普段エネルギーを得るとき原子(分子)の結びつきが変化することによりエネルギーを発生させています。
メタン(人魂の正体といわれる)を燃やして熱を発生させるときにはメタンが酸素と結びつき、その際に熱が発生します。
CH4 + 2O2 -> CO2 + 2H2O + Q
核融合はこのような反応とは全く別の反応です。
例えば、核融合炉を作る際に有望と考えられている反応にD-T反応があります。
D(重水素)は水素より中性子が1個多いもの、T(三重水素)は水素より中性子が2個多いものです。
D、T共に化学的な性質は水素と同じです。
重水素は自然にも少し存在していて、水の中にもH2OとD2Oが混在しています(Dの存在する割合は約0.015%)。
DとTをものすごい勢いで衝突させると、2つの原子核が一緒になり、Heの原子核が出来、中性子が1個出てきます。
D + T -> He + n
DとT(ともに水素)から新しい原子Heを作るという意味では現代の錬金術ということも出来るでしょう。
メタンの燃焼では分子どうしの結びつくエネルギーが反応の前後で異なり、
反応後に余ったエネルギーが熱として現れます。
核融合反応ではどこからエネルギーが出てくるのでしょうか。
反応の前後では質量が保存されなければなりません。D-T核融合反応の前後で質量を比べてみると、
D + T = 2.014102u + 3.016050u = 5.030152u
He + n = 4.002603u + 1.008665u = 5.011268u
差し引き 0.018884u となり、行方不明になった質量があります。(単位のuは炭素C12の質量を12uとした単位)
ここで行方不明の質量の説明として登場するのが有名なEinsteinの方程式E=mc2です。
この式はエネルギーは質量と同じものであるということをいっています。
行方不明の質量0.018884uはエネルギーに変わったのです。
そして、このエネルギーが核融合反応で発生するエネルギーなのです。
主な核融合反応式を次に示します。
D + T -> 4He + n + Q
D + D -> 3He + n + Q
D + D -> H + T + Q
D + 3He -> H + 4He + Q
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(2)どうやってエネルギーを生み出すか
現在実用化されている核分裂炉を実現するためにはウランやプルトニウムを
特定の条件の下に集めれば必然的に核分裂反応が起きますが、
核融合反応を起こすには核融合反応を起こす原子核を連続的にぶつける必要があります。
現在の核分裂炉(今の原発で行われている反応)と違い核融合炉の実現が困難な理由はここにあります。
原子は正の電気を持つ原子核と負の電気を持つ電子から構成されています。
核融合反応が起こるためには原子核がぶつからないといけません。
原子核同士がぶつかるためにはお互いに働く反発力に打ち勝たないと行けないのです。
これはこすった下敷きに紙屑が引き寄せられたり、逆にほこりが反発して吹き飛んでいったりするのと同じ現象です。
この電磁気力は距離に反比例するので近づくほど莫大な力を発揮します。
他にも原子核間に働く力はありますが、原子同士を1000km/secの速度で衝突させないと
核融合反応は起こらないと考えられています。
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(3)プラズマの制御
核融合を実現する上で次の3つの制御が必要になります。
1)プラズマの位置の制御(平衡制御)
2)プラズマへのガス供給の制御
3)加熱の制御
それぞれの制御にはコンピュータが使用されますがコンピュータに制御を行なわせるためには、
制御方法を数式化する必要があります。その様々な制御方式のうち基本となるのがPID制御です。
PID制御とは比例制御(P)、積分制御(I)、そして微分制御(D)の英語の頭文字を取ったものです。
このうち積分制御は比例制御とともに使用され単独で使用することが無いため、
ここでは比例制御と微分制御について説明します。
なお、[積分制御]は、比例制御を行ったさいに生じるオフセットを自動的になくすための制御です。
[比例制御]は、制御値を偏差に比例させた制御です。
つまり目標値からの離れ加減により制御の大きさを決める方法です。
[微分制御]は、偏差の変化が大きいときにより大きな制御を行うための制御です。
つまり急激に状態量が変化したときより大きな制御値を出力する制御です。
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